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記事番号 【No.13】
投稿日時: 01/03/04(日) 21:13:19
タイトル: Mail#140 大不況
コメント: 16世紀の大航海時代に繁栄を極めたスペインは17世紀前半に大不況に陥り人口も減少した。この不況はハプスブルグ・スペインの長期的衰退の始りだった。スペインに代わり台頭してきたイギリスも18世紀初めにかけて、人口の減少をともなう長期の経済不振を経験した。バブルの形成と崩壊、失業の増加、歴史的な低金利が続き、人々は成長に自信を失い、社会不安が蔓延し(今の日本さながらである)、ようやく1657年時のピーク人口を更新したのは、実に60年後のことであった。スペイン、イギリスともに「帆船と大砲」によって海洋帝国を構築した。その後、大不況を経た2ヶ国を分けたのは、所謂、産業革命である。イギリスは18世紀前半の不振を新エネルギー、すなわち石炭を利用する蒸気機関の開発に成功することで停滞を乗りきり、力強い人口と経済の成長軌道に戻ることができた。一方、スペインの勢いは、今日に至るまで復活しなかった。
 アメリカの人口は19世紀半ばの3千万人から70年間で4倍以上に増え、人口の停滞や減少こそなかったが、
1920年代に、これまでに人口増加の大きな要因であった移民を制限する排他的な動きが出てきた。人々の
将来に対する考え方に変化の徴候が現れた。アメリカの1930年代は、バブル崩壊とこれに続く長期の不況、20%を超える深刻な失業者の増加、かつてない異常を低金利が接続し企業収益が長期に低迷する中(今に日本さながらである)で、人々は将来に対する希望を打ち砕かれ絶望的な日々を虚しく過ごした。長い沈滞を吹き飛ばしたのは第二次世界大戦とその最中に開発されたアメリカ独自のテクノロジーである原子力とエレクトロニクスであり、これらが戦後世界の経済発展を牽引していった。
 日本は、大国が経験した大不況下にある。それでも、携帯電話の普及があったからややましである。もしこれがなかったらと思うとぞっとする。財政政策、金融政策が効かず、しがらみだらけで規制緩和も行えない今日の日本経済を救えるのは、画期的な新エネルギーや新テクノロジーの開発であろう。大学や研究開発への公的資金投入こそ、最も重視すべき経済対策である。